
伊藤有希
【新築・リフォーム】インテリアの打合せでパースが便利な理由
更新日:2019年9月5日
私はインテリアコーディネーターとして、新築住宅の内装(インテリア)についてお客様のご相談をお受けしています。
内装のお打ち合わせでは、できるだけパースを活用したいなと考えています。
なぜなら、私の業務の中で好きな作業のひとつだからです。
今回はそんなパースについて考えていることをお伝えしたいなと思います。
インテリアコーディネートとパース
打合せに付きまとう不安
例:トイレのコーディネート
お客様はなかなか完成図が想像できない
パースはすべてを語らない
最後に
インテリアコーディネートとパース
インテリアコーディネーターとなって習得した技術の一つにパース作成があります。、
パースとは、簡単に言うと「完成イメージ図」で、つまり提案した空間デザインの内容を画面上で視覚的に見えるようにするものでです。

インテリアコーディネーターの試験の特性上、資格学習のなかで手書きパースを学びます。
完成イメージをイラストで描く訓練を行います。
私が普段、作成するのはパソコン上で3Dでパースを作成します。
それによって
・クライアントとイメージの共有がしやすくなる
・施工側に完成イメージを伝えやすくなる
・「空間のデザイン」というものを視覚的に伝えあえる
と、いうメリットがあるスキルのひとつです。
例えば、平面図上である一面の壁にタイルを張ることを言葉で説明されたとき、想像がつきにくいことがあります。
それでいいのか悪いのかクライアントはなかなか判断できません。
「提案者を信用して、完成して見てのおたのしみ…。」
となることもありうるのです。
もちろん提案者の頭の中に確固たる完成図があり、クライアントとの信頼関係をもって互いに納得いく打合せであるならそれは素晴らしいことだと思います。
しかし、近年はスマートフォンの広がりでお客様ご自身が情報収集されることも増え、
「こんなスタイルにしたい」と、インテリアの勉強をされて来られる方もよくお会いします。
「どんな部屋になるかきちんと決めたい」
「きちんと確認したい」
という熱心な想いを感じます。
やはり、一生に一度の買い物。
大きなお金を投じるのですから、慎重になるお客様のお気持ちもよくわかります。
ひとつひとつ、どんなイメージになるのか確認できると安心して打合せに臨めるきっかけにもなるのです。

お客様がインテリアに興味を持たれ、私どもにたくさん質問をしてくださることはとてもうれしく思いますし、それによって私はいろいろなことを学ばせていただけるのです。
打合せに付きまとう不安
しかし正直なところ、インテリアコーディネーター自身もミスを起こす可能性があります。
なぜなら
「住宅の部屋ひとつをとっても決めなければならない色は何か所もある」
と、いうことは
「カーテンや壁紙を決めるときに一つでも見落とすと、全体のイメージが崩れる」
なんてことになります。

もちろん、本来はそういったことはあってはなりません。
ただ、打合せの内容は多岐におよび、ヒューマンエラーが起こるリスクは常に潜んでいます。
決して自分を過信してはいけません。
もちろんプロとして、大きなミスを回避するためにきちんと事前にチェックするようにしています。
私はチェックの一つとして、パースで全体を確認する作業をたまに行います。
例:トイレのコーディネート
トイレのコーディネートを例にご説明します。
「トイレの壁を一面だけ色を変えてアクセントクロスを貼りたい」
というクライアントから要望があります。
トイレの中には
・【床】【ドアの色】【便器】【壁】
・【手すり】【手洗い】【収納扉】【カウンター付きの紙巻き器】
・【造作の棚】
・【巾木】【廻り縁】
など実は様々な色の要素が入ってくる場所です。
トイレはプライベートな空間なので少し凝ったり、かわいらしくしたりする方も多いく、アクセントクロスのご希望はよくあります。
床…白っぽくすっきりと
壁…ダーク系のクロスを合わせて、タイル張りでかっこよく
収納の扉や紙巻き器の棚部分も、ダークブラウンでシックに揃えて…。
壁と床、設備等の組み合わせとしてはモダンなデザインで…となりそうですよね。

しかし、よくよく全体をチェックしてゆくと...。
ドアの色…明るいブラウン(家全体で決めていたのでナチュラルカラー)
手すり…ナチュラルカラーかホワイトしか選べない
(契約時に指定された仕様品から選ぶが、他デザインは追加費用がかかる)
巾木や廻り縁…ホワイトカラー
(一軒当たりで発注するので色変更は追加費用がかかる)

このようになると、ちょっとグレーのタイルは難しいかも…なんてことになるかもしれません。
他の色を全部ダークブラウンなどでまとめたのに、手すりが明るいブラウンだとすこし浮いて見えるかもしれません。
どんな部材が入るか、ひとつひとつパースに配置してチェックしていくと違和感に気が付くことができます。
もちろんあますところなく、すべての要素の組み合わせを提示しコーディネートをしたうえで提案するのがインテリアコーディネーターの仕事です。
しかし…コーディネーターが床や付随設備の色を見て、それに合う壁紙を提案したところ、色が選べない手すりの色が全くあっていなかった‼(;・∀・)
なんてことが起こらないとも限りません。
ただ…人間の脳の容量は限られているのです。
そんなとき空間把握のプロとして考えるならそういったアンバランスな仕上がりを回避するために、完成予想図をアウトプットしていろいろと決定したカラーを統合していくのはコーディネーター側にとっても有益なのです。
「いつもないけど今回は手すりがついてた!!」
「ここ、こんな色だったっけ…あちゃあ度外視で提案しちゃったなあ」
ということは多分にあり、そういった提案ミスを回避する手段として3Dパースでの色のバランスの確認は有効なのではないかと思うのです。
※ナチュラルトーンで合いそうな色合いを、改めてご提案できますね。
お客様はなかなか完成図が想像できない
平面図のみを確認しながら
「ここの色がダークブラウンを選ばれて、こちらの色だと…。」
とご説明することもありますが、バラバラに資料を確認しながらそれぞれが頭の中に組み合わせた完成図を想像するのは、案外難しいものです。

お互いに「うーん」と、悩みながら打合せを行うことも多いです。
このような場面で全体を立体におこして、色のイメージをつけ、3Dパースを活用し視覚的に確認できると打合せの時間が短縮できるように感じます。
なぜなら、打合せに時間がかかってしまうお客様をみていると、「イメージをすること」に時間を使っている場合が多いからです。
イメージをした上で、それが合っているか考えるのです。

「今後、後悔しないか」
「本当にその色がいいのか」
「おかしくないか」
など、など。
そして常に
「自分の想像したものが正しいかどうか」という不安を抱えながら考えておられるのです。
ざっとしたイメージであっても、3Dの資料があればお客様のイメージを手助けすることになり、悩むお客様はすこし安心できます。
お客様の「完成図を自分の頭で組み立てる」作業を省き
「自分のイメージが正しいかどうか」という不安を取り除くことができる。

それによって安心して、その色、デザインが好きか、そうでないか、という判断に集中できます。
パースはすべてを語らない
とは言っても、パースはあくまで補佐です。
絶対に過信してはいけません。
現場で「パースに入ってなかったけど、実際は付けることになった」
なんてこともありますし、
「パースで見た色とちがう!」
なんてこともあります。

実際の空間に身をおいて感じるものと、3Dパースを見て感じるものはやはり違います。
赤系の壁紙を広い壁いっぱいに貼ったら、想像以上に圧迫感があることもありますし。
可愛いと思った水色が、思ったより淡く主張がない場合があったりします。
「小さなサンプルで見るより、壁に貼ると明るく感じる」
「照明の下で見る色と、太陽光で見る色は全然違う」
「打合せする机に広げたとき、机の色の影響で違う色に見える」
など色の見え方の特性上、本物のサンプルでさえも「なんかイメージと会わないかも…」となる恐れがあります。

印刷や、パソコンの画面、プロジェクターでの表示…。
3Dパースの出力方法は様々ですが、本当の色を再現できているとは決して考えてはなりません。
パースはあくまで、提案の補助、説明の補助なのです。
それを使う提案者は、その特性をきちんと理解し実際とは異なるということに注意しながら、お客様と対話する必要があります。
最後に
わたしは、打合せの中でお客様に楽しんでもらいたいという気持ちでお客様の前に立ちます。
新しい住まいに向けて打合せが進むにつれて楽しい気分で、ワクワクして、お気に入りの家に住んで、長く大切に生活していただきたいのです。
だからこそ、打合せでお客様が過剰に疲れたり、頭を悩ませることは避け、ポジティブに「どっちがいいかなあ、こっちもすきだなあ」とインテリアを選べることを楽しんでほしいと思っています。
そのためには、お客様には安心して打合せに臨んでいただけるよう未熟ながらもご対応させていただきまたいとおもいます。

※ちなみに私が使用しているパースソフトはメガソフト製の「インテリアデザイナーNEO2」というもので、当社からは目的別にいくつもパースソフトが販売されています。
設計者向けのマイホームデザイナーPROをはじめ、店舗設計、医療機関設計など、それぞれの分野に特化したソフトが販売されています。
基本操作はあまり変わりなく、入っている素材や、必要とされる構造計算などの機能が違うのだと考えています。
(マイホームデザイナーは触れたことがあり、北側斜線制限の計算機能などがついていました。インテリアデザイナーにはそういったものはありませんが、ニッチや織り上げ天井作成など内装に特化した加工機能がはいってます)